第13話

「姫花? 大丈夫か?」



唯が、まだしゃがみ込んだままの姫花を見下ろした。



「……ぐすっ」



「えっ?」



俯いて鼻をすする姫花を見て、唯は焦った。



慌ててしゃがみ込み、姫花と目線の高さを合わせると、宝石のような蒼い瞳が涙で潤んでいた。



姫花のそんな顔を見たのは何年ぶりだろうか?



「そ……そんなにアイツらが怖かったのか?」



「……うぅ……ふえぇぇん……」



ついに、姫花の涙腺が崩壊した。



傍から見れば唯が泣かせたようにしか見えない。



……実際問題、姫花を泣かせたのは紛れもなく唯だが。



勿論、本人は全く気付いてはいない。



大好きな唯の好きな女性のタイプは、自分とは正反対のタイプだと知った姫花。



生まれて初めて経験した失恋に、涙が止まらなかった。



「……姫花……」



未だに勘違いをしたままの唯は、姫花の髪をそっと撫でた。



その優しい唯の手の温もりに、



「……うわぁーん」



姫花はますます泣いた。



「えぇっ!? なんでだ!?」



その答えを教えてくれる人は、今この場にはいない。

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