第12話

「い、委員長……」



「……あれ? 委員長ってこの子と知り合いだっけ?」



「……」



いつも姫花と登下校を共にしているので、周知のことかと思っていた唯は、予想外の言葉に黙ってしまった。



なるほど……自分程度の地味な男では、姫花と頼斗の2人と並んだ所で、美男美女+アルファーくらいにしか認識されていないのか。



妙に納得出来てしまうところが、余計に腹立たしい。



「……怯えている下級生に手を出すな」



とりあえずは、最もらしいことを言っておく。



「内申に響くことになっても知らないぞ」



「……いや、委員長は先公にチクったりするようなヤツじゃないだろう?」



「そんな陰険なことしないよな?」



姫花から手を離し、あわあわと唯に駆け寄る2人を、



生憎あいにく、俺は腹の黒い陰険野郎だから、そういうことも平気でやるぞ」



唯は冷たい眼差しで見下ろした。



「分かった! もうこの子には近付かないから!」



「約束するから!」



勿論、先生にチクるなんて面倒なことをするつもりはないが、



「当たり前のことを一々言うな。失せろ」



腹が立つので突き放した。



立派な八つ当たりである。



「は、はい!」



「姫花ちゃん、ごめんね!」



2人は床に放置していた各々の鞄を慌てて掴み、走り去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る