第9話
電車を降りて、そこからはバスに乗り、学校の最寄りのバス停からはまた5分程歩く。
梅雨時の通学は、少しだけ気が楽だ。
傘を差して歩いているので、必要以上に振り返って顔を見られることがない。
でも、それは外を歩いている時だけの話。
一歩校舎の中へと入ってしまえば、一斉にじろじろと見られ、また陰口を叩かれる。
「桐生さん、今朝も両手に花だ」
「逆ハー気取りかよ」
両手に花?
逆ハー?
片方は実の双子の弟だっつーの!
似てないってだけで判断するなー!!
そう叫びたいのを、唇をぐっと噛み締めて堪えた。
「……」
黙ったまま1年生の教室がある3階を目指して階段を登る姫花に、
「じゃあ、姫花。放課後、また迎えに行くから」
2階で階段を登る足を止めた唯が、ニコリともせずに事務的に告げた。
……その唯のシャツの裾は、皺だらけのままで直されてはいない。
「あ……うん」
それを申し訳ない気持ちで眺めつつ、姫花は小さく頷いた。
姫花の返事を聞いてから、唯はくるりと背を向けて歩き出した。
その背中からは、唯が姫花をどう思っているのか、読み取ることは出来なくて。
「おい、姫花。遅刻するぞ」
頼斗に声を掛けられるまで、その背中を見送っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます