第4話

父と目が合った瞬間に、また溜息をつきたい気持ちになったが、ぐっとこらえる。



「眼科医なら、私と頼斗の目の色を交換してよ」



突飛な発言に、



「えっ! 俺は別にそれは望んでないぞ!」



頼斗は慌てて隣の姫花を見た。



「何を馬鹿なことを……」



父は呆れたように頭を抱えた。



「そんなに俺に似た顔が嫌なのか?」



「ママみたいになりたかった」



「……」



悲しそうに黙り込んだ父に、姫花はちょっと言い過ぎたかなと思ったが、



(だって本気でそう思ってるもん)



発言を取り消すつもりはなかった。



別に、父のことが嫌いなわけではない。



本人には言いたくはないが、むしろ尊敬しているくらいだ。



これだけの容姿で、一時は超が付く程の人気モデルをしていて、現在は立派に医者として働いていて。



当然のように今も昔も女性からモテまくっているにもかかわらず、ずーっと変わらず母一筋なのだから。



夫婦と言うよりは恋人同士のように見えるので、子供の目線から見ていても恥ずかしいくらいだが。



姫花は母と喧嘩をしたことはないが、もしすることがあれば、父は問答無用で母の味方をするだろう。



それくらい、仲の良すぎる夫婦だ。



こんな夫婦になりたいなと、密かに憧れを抱いていたりもする。

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