第3話

「ママと同じ色が良かったのに」



そうぼやくと、



「まーた言ってんのかよ」



後からやってきた姫花の双子の弟・桐生 頼斗らいとが姫花の隣の席にストンと座った。



姫花と頼斗は、双子とは言え二卵性双生児であるため、その容姿は全く似ていない。



頼斗は母親譲りの黒い瞳と色素の薄い栗色の髪を持っている。



母は視力障害のために眼球の移植手術を受けているが、頼斗の瞳を見る限りでは、彼女も元々は綺麗な黒色の目をしていたのだろう。



姫花の、憧れの色だ。



「頼斗はいいよね、ママと同じで」



姫花は、テーブルで頬杖をつきながらむくれた。



「ん? 俺は父さんと同じ色の姫花が羨ましいけど」



頼斗は、テーブルの真ん中に置かれていたサラダボウルからプチトマトを1つつまんで口に放り込んだ。



「コスプレとかやり甲斐がいがありそう」



「……やらねぇよ」



姫花は恨めしそうに頼斗を睨んだ。



「姫ちゃん、言葉遣いが悪いよ」



そう言いながら双子の目の前にトーストの載った皿を置いたのは、母――桐生 沙那さな



柔らかな栗色の髪に黒目がちの大きな瞳が印象的で、ふわふわした雰囲気の、少女のような可愛らしい人。



言葉遣いも所作も美しい母は、姫花の憧れの女性像そのもの。



「……はぁい」



頬杖もやめて、姿勢を正した。



「ねぇ、父さん」



姫花は、母の淹れた紅茶を美味しそうに飲んでいた父の方へと向き直った。



「何だ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る