絶世の美少女だろうが、コンプレックスくらいあるわー!
第2話
梅雨真っ只中のある日の朝。
「はぁー」
洗面台の鏡に映る自分の顔を見て溜息をついた少女の名は、
今年の4月に高校へ入学したばかりの15歳。
髪は腰まで伸ばしたストレートの黒髪ロング。
その漆黒の前髪の隙間から覗くのは、まるで快晴の空を映し込んだかのような深い蒼色の瞳。
人からよく“絶世の美少女”だとか言われているが、姫花本人にとっては見慣れた普通の顔。
だが、人とは違う瞳の色が、自分は普通ではないのだと主張されているようで――だから、姫花はこの自分の瞳の色が大嫌いだった。
この目立つ顔で、しかも名前が『姫花』と来た。
お陰で、自身の通う高校では『高嶺の花のお姫様』だとか陰口を言われる始末。
こんな名前を付けた親を、恨みたくもなる。
重い足取りでリビングの方へ向かうと、ダイニングのテーブルでは既に父が朝食を取っていた。
「お、姫花。おはよう」
顔を上げた父は、姫花と同じ真っ黒の髪に、真っ青な瞳を持っている。
――桐生
若い頃は、この目立つ顔と、189cm(もう1.9mって言い方で良くない?)の長身を活かしてモデル業なんかをしていたらしいが……
現在はこの街で一番大きな総合病院で眼科医をしている。
超人気モデルだった男の娘、医者の娘、などというこの自分の肩書きも、大嫌いだ。
「はぁー」
父の挨拶を無視し、その対面の席に腰を下ろした。
「おい。俺の顔を見る度に溜息をつく癖をやめろ」
父に睨まれ、
「はぁー」
自分とよく似たその顔がまた視界に入り、本日何度目かの溜息をついた。
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