第90話
そこまで考えた時、
――♪♪♪♪♪……
沙那のスマホの着信音が、部屋の中から聞こえてきた。
そういえば、沙那の部屋は確認していなかったなと気が付いて……
そもそも帰宅した時、沙那の靴があることにすら気が付かないくらいに動揺していた自分に、酷く呆れてしまった。
すぐさま電話を切って、スマホを手に握り締めたまま沙那の部屋に向かう。
扉を軽くノックして、
「沙那……?」
薄く開いた扉から中をそっと覗くと、
「……ん……」
自分のベッドで眠っていたらしい沙那が、眩しそうな顔でこちらをゆっくりと振り向いた。
「あ……おかえり、スー」
その声には酷く元気がなく、
「熱があるのか?」
体調を崩しているのだとすぐに分かった。
「うん……少しだけね」
本当は辛いくせに、無理して笑顔をつくろうとする沙那が痛々しい。
「スーに
「馬鹿、そういうことじゃない」
純が思わずムッとしてベッドに近付くと、
「あっ、そっか。ご飯の準備してないや」
沙那が慌てて体を起こそうとする。
「馬鹿。もっと違う」
純も慌てて沙那を押し倒して、その体に布団を掛け直した。
盛大に溜息をついてから、
「卵粥、作ってやるから。寝ていろ」
沙那の頭をそっと撫でた。
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