第87話

それから数日が経った。



あれ以来、陽も祐也も何も言わなくなったのだが、いつもの4人で学校帰りにカフェに立ち寄った際――



いつもなら4人がけのテーブルに着く時、沙那の向かい側に純が座り、隣には陽が、その陽の向かいに祐也が座る。



それが、この日はとても自然な流れで陽の隣に祐也が座った。



「……」



「……」



純と沙那は黙ったままアイコンタクトを取り、祐也の向かいに純が、陽の向かいには沙那が腰を下ろした。



「アップルパイかチーズケーキか、悩むわね」



メニューを見ながら顎に手をやった陽が呟いて、



「両方頼んで、俺ととでシェアすればいいじゃん」



祐也が何でもないことのようにさらりと言い放って、



「……人前で陽って呼ばないでって言ったでしょ」



メニューから顔を上げた陽が、すぐ隣で同じメニューを覗き込んでいた祐也を思い切り睨みつけた。



席に着いた時点でもしやと思っていた純は、



「……」



何か言いたげにしながらも黙り込んでいて、



「ねぇ。2人って、やっぱり……?」



沙那は黙っていられずに恐る恐る問いかけた。



祐也はすぐにぱぁっと顔を輝かせて何か言おうとしたが、



「とりあえずのお試しよ」



陽がバッサリと斬り捨てた。

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