第84話

明らかな拒絶にしか見えない陽の態度に、祐也は身動きひとつ取れなくなり、



「……」



大慌てでバッグに荷物をまとめる陽を、黙って見ていることしか出来なかった。



「沙那と桐生君にも謝っといて、ごめん」



そして、そそくさと部屋を出て行ってしまい、



「……付き合おう、すら言わせてくれないのか、五十嵐は」



一人残された祐也は、テーブルに突っ伏した。



そうして、それから10分も経たないうちに、



「榊!」



少し慌てたように見える純が、部屋に戻ってきた。



「告白したのか?」



「あぁ。途中で逃げられたけど」



顔も上げず、テーブルの上に置いた両腕に顔をうずめたままの祐也。



「沙那が、五十嵐を追いかけていったんだが」



「……」



「いつもと、立場が逆だな」



そんな純の言葉に、祐也はやっと顔を上げてそちらを見る。



「今度は俺と沙那が、お前らの傍にいてやる番だ」



祐也の隣に腰を下ろしながら微笑む純の優しげな蒼い瞳と目が合い、



「うるせーな。でも……ありがとな」



持つべきものは友だと、祐也はこの時本気で思った。

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