第80話

でも分かりづらいのは表情だけで、



「いいよなぁ、お前らは」



祐也の向かいに座る2人の手が自然と重なり合うようにして繋がれていて、幸せそうなのが嫌でも分かる。



「俺なんて五十嵐の隣に座ろうとしただけで“狭いからあっち行け”だぜ?」



なるべく陽の隣をキープしておきたい祐也にとって、これ程悲しいことはない。



むくれる祐也の顔をじっと見ていた純が、少し悩むような表情を見せる。



「疑問なんだが、五十嵐がお前のことを好きでいてくれていると確信が持てるまでは、告白はしないつもりなのか?」



その言葉を最後まで聞く前に、カップに口を付けて紅茶を飲んでいた祐也は、



「ごはっ!」



気管にでも入ったのか、変なむせ方をした。



沙那が、ソファーの横に立てかけるようにして置いていた自分のバッグの中から慌ててハンカチを取り出し、祐也に差し出す。



「あ、さんきゅ……」



それを受け取りながら、その沙那の優しさにホッとしたのも束の間で、



「陽はきっと、ユウのこと異性として意識してないよ」



沙那の歯に衣着せぬ物言いに、



「えぇ……」



祐也は今度は泣きそうな顔をした。



「ユウにそんな目で見られてるなんて夢にも思ってないだろうから、ちゃんと素直に伝えなきゃ」



対して、沙那は胸の前で力強く右の拳を握り締めた。

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