第79話

「聞いてはきたけど……ユウ、これ聞いてもヘコまない?」



その日の講義を全て終え、祐也は沙那と純の暮らすマンションへとやって来ていた。



陽はバイトが忙しいとのことで、現在ここには来ていない。



リビングのソファーに沙那と純が並んで座り、純の向かいに祐也が座って、沙那の淹れた紅茶を3人で飲む。



「その言い方でもう既にボコボコにヘコまされてるんだけど」



祐也がヘコむのを前提とした沙那の前置きに、祐也はガクッと項垂れた。



「で? 五十嵐は何て言ってたんだ?」



純にとっては他人事なので、向かいの祐也とは対照的に優雅に紅茶をすする。



「“はたで見てる分には面白いヤツよね”って」



沙那の答えに、



「……」



祐也は黙り、



「ほう。あくまでも第三者を貫く姿勢か」



純が追い討ちをかけた。



「桐生、お前! 他人事だと思って楽しんでるだろ!」



祐也の八つ当たるような声にも、



「大事な友人の一大事が楽しいわけないだろう」



純は至極真面目そうな表情で返す。



沙那が絡んでいないことには基本的にポーカーフェイスを貫く純の本心は、たとえ幼なじみの祐也でも分かりづらい。

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