第71話

純は沙那が絡むと心が狭くなりすぎる。



陽にそう指摘されたばかりではあるが――自覚した程度でそんなに簡単に直せるのなら、純だって苦労はしない。



「……くっ……」



どうすればいいのか分からなくて嫉妬の感情ばかりを持て余している純は、無意識のうちに沙那の手を強く握り締めていた。



腰の動きも自然と速くなって、



「……あっ」



沙那は我慢出来ずに甘い吐息を零す。



純と繋いでいない方の右手で、彼の頬にそっと手を添えると、



「沙那」



沙那の意図を汲み取った純は、彼女の唇にそっとキスを落とした。



「大好きだよ……純」



沙那の口からは滅多に聞けない“純”呼びに、



「うっ……沙那……!」



純は堪えきれず、沙那の中へと欲を全て吐き出した。



「はぁ……はぁ……」



まだ達するつもりのなかった純は、悔しそうに沙那からそっと体を離すと、彼女の隣にごろんと寝転がる。



「……突然、呼び方を変えるとは……ずるいぞ」



「だって、純って呼ばれるの好きなんでしょ?」



「別にそういうわけでは……」



「じゃあ、何て呼ばれるのが好き?」



そんな質問に、純は気だるい腕を持ち上げて沙那を優しく抱き寄せる。

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