第69話

カーテンを閉めて薄暗くした室内で、



「沙那……」



「……っ」



純が壊れ物に触れるかのように、沙那を出来る限り優しく抱く。



まるで初めて交わった時のような、ゆっくりとした優しい動きに、



「……あっ……スー……」



沙那は堪えきれず、純の背中に両手を回してしがみついた。



「痛かったか?」



すぐに動きを止めて、慌てて沙那の顔を覗き込む純。



今日の純は何故か沙那に対して物凄く気を遣っていて、いつもの彼とは別人のよう。



「ちが……その逆」



何と答えればいいのか分からなくてそう濁せば、



「沙那……間違っても“もっと”なんて言わないでくれよ」



ゆっくりとした律動を刻み続ける純が、沙那の目を真っ直ぐに見下ろした。



「俺は今、理性でなんとか保っているが……沙那に煽られたりすれば、絶対に優しく出来なくなるから」



「え……」



「沙那に嫌われたくないんだ」



儚くも強くきらめいて見える純の蒼い瞳に見つめられて、沙那の胸がきゅうっと締めつけられる。



「……私たちの仲って、そんなに簡単に壊れちゃうものなのかな?」



朝日に指摘されて、陽からは励ましてもらえた『絆』というものについて、沙那はずっと考えていた。



『絆』だなんて考え方をするから難しく感じるのであって。

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