第67話

「ち、違うもん……!」



慌てて首を横に振る沙那の目の前で、純が蜜で濡れた指先を舐める。



「沙那の味がする」



純のその一言で、その動作で、



「……!」



沙那は真っ赤に染まった顔を慌てて横に背けた。



「沙那がこのまま放置されても平気だと言うのなら、俺はこのまま沙那をただ抱き締めながら眠るが」



「……」



与えられないかもしれない、と思うと、途端に沙那の内側が疼き出す。



「こんなに濡れていて、ここでやめるなんて物足りなくないか?」



「……」



分かっていて聞いてくる純の声はとても意地悪なのに……それでもとてつもない色気をはらんでいて。



その声を聞いているだけで、蜜が勝手にどんどん溢れ出てきてしまう。



「スー……」



沙那が、涙の溜まった目で懇願するように純を見つめた。



いつもなら、それだけで沙那の求めているものをすぐに与えてくれるのに。



「……どうして欲しいのか、言わないと分からないだろう?」



今日の純は――何故だか物凄く意地悪だ。

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