第63話

少し遅めの朝食を食べ終えた純は、



「沙那……」



後片付けを終えてソファーで一息つこうとしていた沙那をぎゅっと抱き締めた。



「……ベッド行こう」



ぽつりとささやかれたその一言に、



「えっ……まだ朝だよ!?」



沙那は慌てて首を横に振ったが、



「……昨日から一睡もしてないから、眠いんだ……」



純が沙那に力なく寄りかかった。



「じゃあ、お昼まで寝てる?」



「ん……沙那も一緒に」



「……」



初めての状況に、沙那の理解が追いつかない。



もう既にうとうとし始めている純を、



「スー? 支えてあげるから、とりあえずベッド行こう」



ゆさゆさと揺すった。



「ん……? あぁ」



沙那に支えられながらベッドに向かった純は、



「沙那」



「きゃっ!?」



沙那を抱き締めたままベッドに倒れ込んだ。



そのまま、沙那を更に強く抱き締める。



「ちょっ……お願い、離して」



「……」



「スー?」



沙那が恐る恐る純の顔を覗き込むと、



「……」



もう既に静かな寝息を立てて気持ち良さそうに眠っていた。



沙那は純の腕の中から脱出しようとして、



「……っ」



頑張ってみたが、純の腕はびくともせず。



「……」



本当に眠っているのかと疑ってしまうくらい、ガッチリとホールドされてしまっていた。

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