第61話

離れていても、純のことを考えてくれていたのだと知れて――



そんな沙那に、自分はなんて酷いことをしたのだろうと後悔した。



「はい。どうぞ」



出来上がった朝食を、沙那が笑顔でテーブルの上に置く。



そんな沙那を、



「……」



純はまた思い切り抱き締めた。



「スー?」



「すまん……しばらくこのまま……」



どんなに沙那を抱き締めても、全然足りない。



満たされないこの気持ちをどうすればいいのか、純には全く分からなかった。



「ごはん冷めちゃうよ?」



「……そうだな」



沙那が折角用意してくれた食事を食べないわけにはいかず、純は渋々沙那を離した。



テーブルに着き、



「いただきます」



両手を合わせると、そのまま食べ始める。



すると、何故か沙那も純のすぐ隣の席に腰を下ろした。



「?」



いつもなら向かいの席に座るのに変だな、と思いながらクロワッサンを手に取ると――



「あ……」



沙那が悲しそうな声を上げた。



その声を聞いただけで、沙那の気持ちが分かってしまう。



「……ひと口食べるか?」



クロワッサンを沙那の方へ向けると、



「いいの!?」



悲しそうだった沙那の目が、嬉しそうにキラキラと輝き出した。

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