第60話

格好良くないという言葉に、



「……?」



純はやっと自分の体を見下ろして、



「あ……」



起き抜けの格好をしていることに気が付いた。



まだパジャマのままで髪もボサボサ。



顔すらもまだ洗っていない。



「今起きたところなの?」



沙那にクスクスと笑われて、



「……っ」



純は慌てて沙那から離れた。



「朝ごはんもまだ?」



「……あぁ」



素直に頷いた純に、



「じゃあ今から何か作るから、先に顔洗ってきたら?」



そう訊ねた沙那は、いつも通りの沙那で。



「ありがとう」



この家に戻ってきてくれたことに対しての礼だったのだが、



「気にしないで」



沙那はきっと、朝食に対しての礼だと思っている。



それでも、沙那が傍にいてくれるのなら、何だっていいかと思えた。



慌てて身支度を整えてから沙那のいるキッチンへ向かうと、ベーコンエッグの焼けるいい匂いがした。



皿に載せると、その隣にふかふかのクロワッサンを添えられる。



「陽と駅前のカフェで朝ごはん食べてたんだけど、そこのクロワッサンが美味しそうで」



“焼きたて!”と書かれたポップにつられて、つい買ってきてしまった。



「だから、スーにお土産」



そう言って、にっこりと笑う沙那に、



「……」



純の胸はじーんと熱くなった。

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