第58話

沙那は急いで皿の上のパンケーキを平らげて、カップの中の紅茶を飲み干すと、



「私……そろそろスーの所に戻るね」



そう言ってテーブルの隅に置かれていた伝票をさっと取った。



「あっ、沙那」



慌てて止めようとした陽に、



「2人には迷惑かけちゃったから、ご馳走くらいさせて」



沙那はニコッと笑顔を向けた。



「2人で、ゆっくり食べてて!」



そして沙那は本当に3人分の会計を済ませて店を出て行ってしまった。



「……」



状況が飲み込めずにポカンとしている祐也に、



「いつまでもあたしの隣に座ってないで、向かいの席に移動しなさいよ」



陽は冷たく言い放った。



「狭くて食べにくいわ」



「冷てぇなー」



祐也は苦笑しながらも陽に言われた通りに移動して、



「……はぁ……」



陽にバレないように、小さく溜息をついた。

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