第55話
「謝れば済むんだ〜なんて思われたら、また同じことの繰り返しになるだけよ」
陽は、びしっと右手の人差し指を突き立てた。
「もう二度と繰り返したくないって思わせるには、しばらく距離を置くのが大事なの」
「……なるほど」
本当はよく分からないが、沙那はとりあえず頷いた。
「まぁ、あんまりやると相手も諦めモードに入っちゃうから、明日にはちゃんと帰ってあげなね」
気まずいかもだけど、と陽は苦笑しながら付け足した。
「そんな簡単に壊れるような仲じゃないでしょ、アンタたちは」
「……だといいな」
沙那の口から、ポロリと本音が零れ落ちた。
朝日に2人の関係は“意外と脆い”と言われたことを、実は気にしていたから。
今まで信じて疑わなかった純との関係が、朝日という人間が割り込んできただけでこうもめちゃくちゃになるのかと、痛感させられたから。
「信じたかっただけで、実際は強くなかったんだよ、私たちは」
きっと、そういうことなのだと思う。
「絆なんて、そんなもんじゃないの?」
陽は、別段珍しくもなさそうに首を傾げた。
「最初っから強い絆持ってる人たちなんて、いないでしょ」
「……」
「一緒にいろんなこと経験して、共感もして喧嘩もするから、強くなっていくもんなんでしょ?」
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