第52話

沙那の大体の居場所は、彼女のスマホに仕込んだGPSアプリで掴むことが出来る。



別に沙那に内緒で仕込んだわけではなく、沙那が誘拐される事件があって以来、純が彼女の同意の元でインストールしておいたのだ。



アプリが示した位置は、陽のアパートだった。



近くのコインパーキングに車を停め、歩いてアパートへ向かう。



陽の部屋の前まで行くと、電気が点いていて、人のいる気配がした。



インターホンのチャイムを鳴らすと、



「……何か用?」



非常に嫌そうな顔をした陽が、扉の隙間から純を睨みつけた。



純を警戒してか、扉のチェーンはかけたままだった。



「沙那は……いるか?」



「GPSで、ここにいるの知ってて来たんでしょ?」



まるで変態でも見るような目つきの陽に、



「沙那を出してくれ」



それでも純は折れずに告げた。



「沙那のこと、信じてないんでしょ? 話しても無駄じゃない?」



「……それも含めて謝りに来た」



辛そうな顔をする純。



「とりあえず、今日は帰って。沙那の気持ちの整理がついてないから――」



陽がそう言いながら扉を閉めようとして、



「気持ちの整理って何だ!?」



純が慌ててその扉を掴んで止めた。

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