第51話

「全然成長しねぇのな、お前」



呆れを通り越して、もう溜息すらも出ない。



「沙那がお前に嘘ついたことなんて、今まで1回もないだろう?」



「……あぁ。ない」



「その沙那を信用できなかったら、何を信じるんだよ」



「……」



「てめぇの自信のなさで、沙那に八つ当たりするのやめろよ。見てて気分悪いぜ」



祐也はそう吐き捨て、純の上から退いた。



このまま何も反応がなければ、もう放置して帰ろうと思っていた。



「……」



純が、無言のまま突然むくりと体を起こし――



「沙那を迎えに行ってくる」



部屋着姿のままで車のキーを掴むので、



「いやいや、せめて着替えてから行けよ!」



帰りかけていた祐也は思わず突っ込んだ。



「あ……」



純も、自分の今の格好を忘れていたらしく、自身の体を見下ろして動きを止めた。



それが何だか意外すぎて、



「動揺しすぎだろ、お前」



祐也は笑いを堪えたが、肩の揺れまでは抑えきれなくて、



「どうせ我慢するなら、俺にバレないように徹底的に我慢しろよ」



純をムッとさせた。

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