第49話

どうして、こんなことになってしまったのか。



どこから歯車が狂い出したのか。



そんなことを今考えても、仕方がないのに。



悲しくて辛くて、涙が止まらなくなる。



「君らの関係って、意外ともろいんやな」



そんな朝日の声に、沙那が慌てて顔を上げると――



朝日は意地悪げな笑みを満面に浮かべていた。



「尚更、俺にしときぃや。沙那ちゃん」



朝日がそう言って沙那に一歩にじり寄った瞬間、



「瀬戸!」



店の扉が勢いよく開き、自分と沙那のバッグを抱えた陽が出てきた。



「ごち。後はよろしく」



そう言って、朝日の胸に伝票を押し付けると、



「行くわよ!」



沙那の手を無理矢理引いて歩き出す。



「えっ? 陽!?」



沙那のそんな声を残して、2人は店を去った。



1人取り残された朝日は、とりあえずは店の中へと戻り、先程まで座っていたテーブルを見た。



そこに載っていたはずの大量の料理は、



「……すっげぇな、あの子」



全て綺麗に食べ尽くされていた。



「純の周りって、おもろい子が多くて羨ましいわ」



苦笑しながら独りちた朝日の顔は、何だか楽しそうに見えた。

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