第48話

「……今日は陽の所に泊めてもらうから――」



だから明日帰る、と言おうとして、



「さーなちゃん! よ戻ってきてくれな寂しいやんかー!」



いつの間にか沙那の後ろに立っていた朝日が、わざと大きな声で話しかけてきた。



「せ、瀬戸さん……!」



慌てて振り返った沙那の耳元で、



『……瀬戸と一緒にいるのか』



沙那の背筋がゾッと凍り付きそうな程の、純の低く冷たい声がスマホから響いてきた。



「あ、あの、スー……!」



『五十嵐といるというのは、嘘なのか?』



「違うよ! 陽も一緒にご飯食べてて――」



『……どうだかな』



疑心に満ちたその声に、純の心が沙那から離れてしまったと感じた。



「……私のこと、信じられないの……?」



『……今は、沙那の気持ちが分からない』



「……」



『学校で無理矢理キスをした俺も悪いが、あんなに嫌そうに拒絶されれば……疑いたくもなる』



「……」



『俺のことが好きではなくなったのなら……無理して傍にいてくれなくていいから』



「あっ! スー、待って……!」



純に一方的に通話を切られ、



「……うぅ……」



沙那の両目から、涙がぽろぽろと零れ落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る