第47話
その人懐っこそうなふわふわとした柔らかい笑顔に、沙那は少しだけ涙が出そうになって……
――ブーッブーッ――
椅子の背もたれと背中の間に置いたバッグの中で、スマホの振動を感じた。
慌ててバッグから取り出し、画面を確認すると、そこには“桐生 純”の表示が。
「……」
沙那は黙ったまま、スマホをバッグの中へ戻そうとして――
「純やろ? 出たりーや」
朝日がにこやかに促した。
「アイツのことやから、多分めちゃくちゃ心配しとると思うで」
朝日の言葉に、
「そうですね……」
沙那は小さく頷いた。
陽の所に泊めてもらうということだけでも伝えようと思い、沙那は2人に断ってから席を立った。
一旦店の外に出てから、まだ震え続けているスマホの画面に表示されている通話ボタンを、指先で軽くスライドさせた。
「……もしもし」
その声は、沙那が自分で思っていたよりも遥かに冷たく、静かだった。
『あ、沙那……』
対して、電話の向こうの純の声は、全くと言っていい程元気がない。
『もう一度、沙那にちゃんと謝りたいんだ。帰って来て欲しい』
そんな純の声に、沙那の胸はぎゅうっと締め付けられる。
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