第44話

「いくら両想いで付き合ってるからって、沙那の気持ちを無視していいわけがないっつーの」



陽はまたムカムカとしてきて、手羽先のハーブグリルにガブッとかぶりついた。



怒りに任せたまま、それをもっもっ……と噛み締めていると、



「男らしい食べ方しとるなぁ」



もう既に聞き慣れてしまった感のある、苦笑混じりの関西弁が聞こえてきて、



「「!?」」



2人は慌てて声のした方を振り向いた。



「よっ。相席構わへん?」



そこには、昼間見た時と同じ、帽子を目深に被った朝日が立っていた。



「構うに決まってんでしょ。どっか一番遠くの、地球の裏側辺りにある席に座りなさいよ」



陽には、沙那と純を喧嘩する羽目に追いやった張本人と馴れ合う気なんざ、さらさらなかった。



「君、めっちゃおもろい言い回しするよなぁ」



陽は本気で怒っているのに、何故か気を良くした朝日が、空いている椅子に勝手に座ってきた。



沙那と陽の席のテーブルは丸型をしているため、朝日は2人の間に座る形となる。



「また昼間みたいに、瀬戸 朝日だーって大声出すわよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る