第40話

祐也は純と同じ医学科ではあるが、受ける講義が全て同じというわけではない。



だから、純がどこで何をしているのかを把握していなかったので――



純が早退してしまっていたということに気付くのが、随分と遅れてしまった。



「えっ? アイツ帰ったの!?」



帰るところを偶然見かけたという学生に話を聞き、



――プルルルルル……――



慌てて純に電話をかけるも、



「無視かよ!」



完全スルーされた。



「うわぁー……やっぱ面倒くせー」



またもガシガシと頭を掻きむしる。



そして、次に沙那に連絡を取った。



沙那は今日は陽の部屋に泊まると言うので、沙那から純の家の合鍵を貸してもらうことに。



学校が終わってから、沙那の合鍵を使って純の部屋に押し入り――



寝室のベッドの上で、巨大な蓑虫みのむしを発見した。



(……また蓑虫コレかよ……)



祐也は盛大に溜息をつきたいのを堪えながら、



「くぉらぁ! 桐生! 起きろー!」



布団にくるまった純の上に飛び乗った。



直後、



「うっ……!」



と小さな呻き声が聞こえたと思ったら、



「なんでお前が合鍵を持ってるんだ……」



純が布団の中からふごふごと言った。

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