第38話

沙那が絡むと、純はこうして子供みたいにだんまりを決め込むことがたまにある。



そして、それは周囲に多大な迷惑がかかる程の面倒事を引き起こす。



例えば今なら――



女子トイレ前から離れない、ということだったり。



一応、純なりに気遣ってトイレより少し離れた位置に立ってはいるが、それでも女子トイレの扉を男子が睨み続けるのは――



「お前、それ怪しいを通り越してすげーこえぇから、いい加減やめろよ」



サイコパス感が半端ない。



正直、今の純とは一緒にいたくない。



「……」



純は自分のスマホを取り出し、沙那ではなく陽にメッセージを送ることにした。



『沙那を連れて出て来て欲しい』



と。



――ピロリンッ



そしてすぐに届いた返事は、



『沙那を泣かせた罪は重いぞ』



そんな一言。



陽もめちゃくちゃ怒っているというのが伝わってきた。



沙那の絶対的味方の位置をキープする陽は、純にとっても安心して沙那を任せられる大切な存在なのだが……



純が沙那の敵と認識されてしまった場合、陽は純にとって、一番面倒くさい存在となる。



「……」



純は、自分の傍にいてくれている祐也をちらりと見た。



頼りなさげな表情をしている祐也を見て、



「……はぁ……」



唯一傍にいてくれる祐也は、でも全く当てにならないのだと理解して溜息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る