第21話

このままにしておくと、本当に逆上せてしまって危険なので、



「よっ、と」



純は沙那の体をお姫様抱っこの要領で抱き上げた。



浴室を出ると、



「みー……」



脱衣所で待ち構えていたスナオが、純を睨み上げた。



その目はまるで、“俺の沙那をいじめるな”とでも訴えているようで。



「安心しろ。断じて、苛めてなんかいないから」



沙那にバスローブを着せながら、スナオをなだめるように言った。



「……やっぱり、スーに似てるね」



沙那はふふっと笑うと、だるそうな右手を持ち上げてスナオへと伸ばす。



「にゃーん」



沙那に顎の下を撫でてもらい、スナオは気持ち良さげに目を細めた。



……心なしか、スナオが横目で純を見ているように見える。



“いいだろう?”と言われている気がしないでもない。



「……何か感じ悪いな、そいつ」



純はムスッとし、



「え? 可愛いと思うけど」



沙那はにこにこしながらスナオを撫でる。



「にゃおーん」



「……」



きっと、この感情は男同士にしか分からない。



こんな子猫に負けてたまるか。



純は心の中でぐっと拳を握り締めた。

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