第20話

純の暮らすマンションのバスタブは、無駄に広い。



長身の純でも脚を延ばしてゆったり入れるところが、この部屋を選んだ決め手だったりする。



それはいいのだが――



2人で一緒に入ったとしても余裕があるという点が、沙那にとっては大問題である。



「狭いから、ここではやめておこう!」



が通用しないのだ。



たっぷりのお湯が張られたバスタブの中で、



「……んっ……はぁ……」



脚を延ばした姿勢の純の上に、向き合うようにして沙那が座らされていた。



純に体を揺すられる度に、バスタブ内のお湯が波を作る。



熱気のこもる浴室内での行為は、逆上のぼせてクラクラしてくる。



しっかりと掴めるような場所もなく、沙那は純の背中に両腕を回してしがみつくしかなかった。



「……あっ……スー、待って……!」



沙那のその声で、何が言いたいのか純は分かってしまう。



「いや、待たない」



バスタブの中のお湯が、激しく揺れ――



「あっ……いや――っ……」




沙那の立てた爪が、純の背中に食い込んだ。



「……っ」



それすらも快感だと思ってしまうのは、それだけ沙那にのめり込んでしまっているということなのか。



沙那の与えてくれるもの全てが、心地いい。



純にしがみついたまま、ぐったりとしている沙那の背中を、トントンと優しく叩く。



「沙那、動けるか?」



「今ちょっと無理……」



意識はギリギリ保てているようで、純はほっと胸を撫で下ろした。

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