第18話

恥ずかしいから嫌だとどんなに訴えても、純は脱衣所まで本当についてきた。



「……」



服を脱げずに固まっている沙那に、



「入らないのか?」



純は不思議そうに首を傾げた。



「恥ずかしいから1人で入りたい」



「沙那の裸ならもう何度も見ているが?」



純は本当に分からないようだ。



「まぁ、確かに……何度見ても、見慣れたり飽きたりすることは絶対にないが」



「……」



余計に恥ずかしくなるので本当にやめて欲しい。



「スーのスケベ……変態」



沙那にはもう悪態をつくことくらいしか、抵抗する術を思い付けなかった。



沙那の台詞に、純は眉間に皺を寄せてムッとする。



「沙那は何か勘違いをしているようだが」



言いながら、沙那の頬にそっと手を添えて指先で優しく撫でる。



たったそれだけのことで、沙那の背筋がゾクゾクと震えた。



「今まで俺が抱きたいと思ったのは、沙那だけだからな?」



「……え?」



「確かに昔は仕方なくとはいえ、いろんな女の相手をしてはいたが……行為自体をいいと思ったことなんて一度もなかった……寧ろ不快で嫌いだった」



そう語る純の目からは、光や感情が消え失せている。



生きていくためだけに体を売っていたのだから、いい思い出は当然なかっただろう。



「……沙那が、初めてなんだ」



純が、真っ直ぐに沙那を見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る