第16話

「沙那、体は平気か?」



すぐに立ち上がった純が、慌てて沙那の方へと歩み寄った。



「うん、平気。それより、いつの間にスナオと仲良くなったの?」



「いや、仲良くなったつもりは……」



言いながら頬をポリポリと掻く純の右手には、ガーゼが当てられている。



「それ、スナオに引っ掻かれたの?」



「まぁ……」



「スーのこと引っ掻いちゃダメだよって注意しないと」



スナオの姿を探す沙那を、



「俺は気にしていないから」



純が慌てて止めた。



「スー?」



「その、なんだ……俺は今まで、ペットとは無縁な生活を送っていたから」



自分が生きるだけで精一杯だった純には、動物と触れ合う機会など一度もなかった。



スナオあいつの存在は何か新鮮でな」



照れくさそうに笑う純を見て、沙那もほっこり幸せな気分になる。



「……そっか」



「それよりも……」



ふと、純の視線が沙那の体の方に向けられた。



「沙那が俺のシャツを着ているというのは、いいな」

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