第15話

「う……うーん……」



どれくらい眠っていたのだろうか。



沙那は、真っ暗な寝室で目を覚ました。



ベッドに純の姿はない。



手探りでベッドサイドの明かりを点けると、



「あ……」



先程まで純が着ていたはずのシャツを着せられていることに気付く。



沙那が着ていた服は、丁寧に畳んでベッドの隅に置かれていた。



ベッドから下りて立ち上がると、純のシャツの大きさがよりはっきりと分かる。



沙那が着るとオーバーサイズのシャツワンピースのようになっていて、純との体格差を示しているようだ。



(これが、彼シャツ……!)



いつか着てみたいと思っていた沙那は1人、感動した。



だが、肝心の純はどこに行ったのか?



入浴でもしているのかもしれないと思い、沙那が寝室を出ると――



「にゃーん」



スナオの楽しそうな声が、リビングの方から聞こえた。



そっとリビングを覗くと、



「ほれほれ」



「にゃー!」



猫じゃらしの玩具を使って、純がスナオと遊んでいた。



その様子があまりにも楽しそうに見えて、



「ふふっ」



沙那は思わず笑い声を漏らしてしまった。



「あ、沙那……」



沙那の存在にすぐに気付いた純が、沙那を振り返り、



「にゃおーーん!」



隙あり! とでも言いたげなスナオが、純から玩具を奪い取る。



「あ……」



玩具をくわえたまま、スナオは走り去った。

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