第14話

「!」



純は咄嗟とっさに手を引っ込めたが、相手の方が動きが速かった。



スナオの鋭い爪は、純の右手の甲をしっかりと捕らえていた。



「……っ」



鋭い痛みに、純は思わず顔をしかめた。



痛みの走る場所を見ると、細く赤い線が三本、右手の甲にしっかりと刻まれていた。



「やってくれたな」



思わず、目の前の子猫を睨みつける。



「にゃにゃーん」



スナオは特別怖気付おじけづいた様子も見せず、満足したような表情でリビングの方へと戻っていった。



「……あいつ、本当にただの子猫なのか?」



可愛げがなさすぎる気がする。



純は深い溜息をひとつつくと、



「沙那……今日も可愛かったぞ」



沙那の唇に、そっと口付けを落とした。



直後、痛む右手を思い出し、



「……スナオのヤツめ」



傷の手当てをするため、純は寝室を出た。



救急箱を取りにリビングへ向かうと、猫用ベッドで丸まっていたスナオが顔を上げ、



「……」



満足そうな目で純を見つめた。



「……」



それが、何故か無性に純のしゃくに触った。



純は、ふと目についた細長い物体を――沙那が購入してきた猫じゃらしを模した玩具を、スナオの目の前で振り回した。



「にゃにゃっ!」



そもそもは、遊び足りなくて沙那を探していたスナオ。



目の前で激しく動き出した玩具に、反応しないわけがなかった。

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