第9話

「あの……スー?」



「俺のことは名前で呼んでくれないのか?」



純の右手が、ゆっくりと沙那の左頬に伸びる。



手が触れた瞬間、沙那の体はぴくりと反応した。



「……スー、じゃダメなの……?」



「駄目だ――純って、呼んで欲しい」



綺麗な蒼い瞳に真っ直ぐに見据えられ、沙那は体の奥から熱が込み上がってくるのを感じた。



「す……純……?」



恥ずかしさを堪えて、なんとかそう呼ぶと、



「……いい子だ」



純に唇を塞がれた。



「んっ……」



すぐに沙那の中に純の舌が侵入してきて、深く絡め取られる。



沙那の全身から力が抜け、純がそのままソファーの上で沙那を押し倒した。



沙那の服の裾から、純の手がするりと滑り込む。



「……あっ……」



沙那は慌てて純の手を押さえた。



「ま、待って……こんな所じゃ……」



「ベッドに行けば最後までするが、いいのか?」



「あ……」



墓穴を掘ってしまった気がする。



「ち、違うの! そんなつもりじゃ――」



沙那は慌てて否定したが、



「もう遅い」



純は沙那を、ひょいっとお姫様抱っこした。

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