第6話

そのまま陽と一緒に、キャットフードや猫用トイレなど、子猫の世話に必要な物を買い込み、純の家へ。



沙那が抱っこし続けている間に、子猫の体の震えは治まっていた。



「沙那って、猫飼ったことあるの?」



沙那の猫の扱いが手馴れているように見えたので、陽が疑問をぶつけた。



「うん。子供の頃ね」



「じゃあ、お任せしちゃって大丈夫そうね」



陽は安堵の溜息をついた。



と、その時、



「ただいま」



純が帰宅した。



リビングに入るなり、



「……五十嵐もいるのか」



嫌そうな顔をした純に、



「ねぇ。最近やたらとそれ言うけど、あたしに喧嘩売ってるの?」



陽も露骨にムッとした。



相変わらず仲がいいのか悪いのか分からない2人の会話に、沙那はおろおろとする。



「あ……ねぇ、スー! この子がそうなんだけど、可愛いでしょ?」



沙那が、例の子猫を抱いたまま、純の傍まで近付いた。



「……」



純が、黙ったまま子猫を凝視する。



「……どこが俺に似ているんだ?」



「全身真っ黒で目が蒼かったら、もう十分桐生君じゃん」



何を言い出すんだという顔をした陽に、



「お前は人を色でしか判断出来ないのか」



純も、お前こそ何を言い出すんだという顔を向けた。



バチバチと火花を散らす2人の間で、



「とりあえず、しばらくはこの子のことはスナオって呼んでいいかな?」



沙那はにこにこと子猫に笑いかけた。



その一言で、2人は睨み合いをやめる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る