第5話

「もしもし、スー?」



『別れ話なら拒否するからな』



とても焦った様子の純の声が聞こえ、



「うわっ、桐生君こっわ!」



沙那のスマホに耳を寄せていた陽が、恐怖におののいた。



『……五十嵐もいるのか?』



その声だけで、純が電話の向こうで眉間にしわを寄せているのが分かる。



「スー? 今、少し平気?」



『あぁ。丁度、休憩に入ったところだ』



純の答えを聞いた沙那は一旦耳からスマホ離し、スピーカー機能をオンにした。



「桐生君そっくりの子猫を拾ったんだけど、里親が見つかるまで預かってくんない?」



陽が簡単に説明し、



『……俺にそっくりだと説明する必要はあったのか?』



純がいぶかしげな声で質問してきた。



「桐生君と生き別れた兄弟かと思ったわ」



陽は、そんなふざけた台詞を至極真面目なトーンで言い放った。



『……』



呆れたのか、黙り込んでしまった純。



「でもね、スー。この子、本当にスーみたいな色をしてるの」



『色?』



「うん。目がすっごく綺麗な子で、放っておけなくて……」



とにかく何とかしたくて、沙那は懸命に訴えた。



『……里親が見つかるまでの間だけだからな』



沙那の頼みを断れない純は、渋々といった感じで承諾してくれた。



そして、念の為に動物病院で異常がないか診てもらうように言われたので、このまま陽と病院へ向かうことになった。



その結果、多少衰弱してはいるが入院の必要はなく、ダニやノミも付いていないので、そのまま連れ帰っても大丈夫だと言われた。

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