純色。
第3話
とある日曜日の昼下がりのことだ。
『沙那! 大変! 桐生君が捨てられてる!』
少し慌てた様子の
「えぇ!?」
沙那は意味が分からず叫んだ。
純は今日、仕事に出掛けているはずなのに。
捨てられているとは、どういうことなのか?
しかも、誰に?
『とにかく、今からあたしの言う所まで来て! あと、タオルも持ってきて!』
陽にそう押し切られ、
「う、うん、分かった」
全然分からないがそう返事をし、バスタオルを1枚バッグに突っ込んだ。
そして、大粒の雨が降り注ぐ外へと飛び出す。
陽に言われた場所は、繁華街にあるバス停だった。
そのバス停には雨避け用の屋根とベンチが備え付けられており、陽はそのベンチの傍でしゃがみ込んでいた。
「あ、沙那!」
陽に手招きされ、慌てて近付く。
「見て、この子!」
陽が指差したのは、ベンチの下に置かれたダンボール箱。
“オスです。可愛がって下さい”
と書かれたその箱の中に居たのは――
「……子猫?」
小さな体を小刻みに震わせた、黒猫だった。
柔らかそうな漆黒の毛に、快晴の空を映しこんだような澄んだ蒼色の瞳が美しい子猫。
その姿は、まるで――
「……スーみたいな色の子」
純そっくりだった。
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