第27話

気がついたらベッドの上だった。

汚い天井。かすむ視界。窓からの光。

すごいデジャビュ。俺の願いも届かず、

"無事に"保健室に運ばれたらしい。


くそ。またふざけた"先生"が出てきたら

どーしてくれんだよ。


「お。気が付いた?」


昨日の今日で、

ひどいデジャブとトラウマに浸っていると

唯一、昨日にはなかった物が俺に話しかける。

厚いカーテンは開けられ、

純白のレースがやさしく風になびく。

まぶしくてハッキリとは見えないが

すぐにわかった。


「すず、め」


横の丸椅子に座って、漫画を読んでいたみたいだ。

どうせなら、こんなやわらかい日差しの中で

小説を読んでるかわいい女子、とかならもっとよかった。

…とは言えないんだけど。


よかった。今度は味方がいる。

保険室の先生よりもっと、心強い親友。

目を細めて雀を見ていると、

ん?と、応えるようにほほ笑む。


「先生はーぁ?」


もう、言うのも飽きたけど、

ホント、寝起きって情けない声。


「あー。今日いるんだけど、

 他の先生に呼ばれてどっか行った。」


「ふ~ん…て、おめ。授業は?」


「さぼりー♪…てのは冗談で。

 今昼休みだし、お見舞いだよ。」


「え。昼休み!?どんだけ寝てるんだ俺。」


「コウちゃんさぼり魔~♪」


「や。さぼりたくてサボったわけじゃねーし」


雀がニシシと笑う。コイツふざけやがって。

謎の体調不良で大変なのはこっちなのに。

けど、昼休みにわざわざ来てくれるって、

コイツ、本当に優しいな。


日中の日差しが注ぎ込まれて暖かい。

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