第21話

反射的に目をつむってしまった。

かなり鈍い音がして、我に返り、

恐る恐る目を開けると、

俺の右フックが、雀の左の頬に

めり込んだところで一時停止していた。

静まりかえる保健室。


「あ。」


「…。」


状況理解し、俺の顔が

サーッと青ざめるのと同時に、

雀の鼻から血がゆっくりと垂れる。

すかさず、出してしまった拳を引っ込めた。


「うわわわわわわ!悪い雀!

 ちょっとこのフックには

 深ぁぁぁい訳があって」


慌てて上体を起こして、

殴られた左頬を抑える雀の肩を握る。

だがしかし、後の祭りってわけで。


「いたいよーう」


殴られた訳もわからず、涙目で俺を見つめる。


「コウちゃん酷いさぁ。俺達親友だろ?」


「いやいやいや!!!聞いてくれ!

 反射的につい!訳があって。」


「俺、先に教室行くわ…じゃね」


「へ?え、ちょ、すず…」


寂しげに左頬を押さえて、

キラキラと涙を飛ばしながら

雀は保健室を小走りで出て行った。


いや。まて。

何あのキラキラのエフェクト。少女漫画かよ。


じゃなくて。と、とにかく

親友の雀を殴っちまった。

事情を説明しなきゃいけねぇ!


そう思った瞬間、

不思議と体のだるさが消えて、

ベッドから飛び出した。

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