第5話

「おーい。おめーら席つけぇ。

 みんなの大好きな物理やるぞ、物理ぃ」


ジャージ姿に寝癖のままの短髪。

死んだ魚のような顔。


理科の先生こと『矢島っち』が、

ぶっきらぼうな口調でチュッパをなめながら

我がクラスに登場した。

奴はホントにちゃんと教員免許とったのか?


教室内はブーイングの嵐。

高校の物理は難しい。

英語・数学・物理。

この三つは高校生の三大苦難教科だ


…まぁ 個人差はあるけど


俺はそんなむさっくるしい野郎たちの熱気の中で、

めまいと吐き気をもよおしていた。

あ、違うぞ?

むさっくるしい男共の空気のせいで、じゃない。

そんなのは慣れてしまったんだけど。



「おう。どーした大石?

 なんか真っ青だぞ、顔。 

 目も半開きだし…」


席がちょうど、教卓の真ん前なので

矢島っちが死亡寸前の俺に気が付いた。

つか矢島っちに、

目が半開きとか言われたくない。

あんたのはすでに3分の1しか

開いてねぇじゃねぇかよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る