第19話
「じゃあ、お願いしようかな?本当に少し重いよ?私は、ちょっと手首の調子が昨日から悪くてね。それで持てなかったんだ。」
「そうなんだ!わかった!おばちゃんはムリをしないでね」
少女は荷物を、ひょいと持つと、「おもったより軽いじゃん」と言いながら笑顔で私の顔を見た。
少女の笑顔と明るい高い声が私の気持ちに、感じたことのない不思議な心地よさを感じさせてくれた。
うちに着くまで少女は、学校の話や両親との楽しい話を聞かせてくれた。
「ありがとう。ここが私のおうちだよ。本当に助かったよ」
「うん!おばちゃんムリしないでね!」
「ありがとう。忘れないからね。本当にありがとう」
少女は、またねー!と元気に手を振って帰っていった。
2日後だった。アパートのチャイムが鳴るので見てみると、こないだの少女が立っていた。
慌ててドアを開けると、少女はニコリと笑って、「おばちゃん大丈夫?」
一緒におやつを食べないか。と聞いてきた。
仕事も終わり、ちょうど帰ったとこだった私は不思議とすんなりと家にあげた。
「なんでまた来てくれたの?」
少女は、私の質問には答えず自分の話をはじめた。
誰かに話したいのだろう。そう思った私は聞いてあげることにした。
「私ね、おばあちゃんがいたの。」
「こないだ言ってたね。」
「おばあちゃんの事大好きで、若菜は、学校が終わるとすぐにおばあちゃんちに行ってたんだ」
少女は自分のおばあちゃんが親との話し合った結果、安楽死制度を利用することになり、前もって知ると言う程の期間がなく、戸惑いのなか大切な存在を亡くしたことを私に話してくれた。
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