第16話
毎日がただ過ぎて行く中で、特に何をしたいとか、こんな野望がある。とか僕には無い、そんな素晴らしい事を思って生きている人はどれくらいいるのだろうか?
こうやって、当たり前にする仕事も考えてるわけじゃなくて、日常だからそうしているだけだ。
お手洗いに行こうと席を立つと端の方から女性の声が聞こえた。
お手洗いに行くのをやめて、資料を探してるふりをした。
最近何故か身近に感じる安楽死制度。
少し興味が湧いているみたいだ。
「うちは、こないだ利用したよー?すごく良かったよ?気持ちもめちゃくちゃ楽になったよー。介護がないんだよ?最高じゃない?しかも面倒なお葬式もないんだから」
「えー。ほんとそんな楽なんだー。うちなんて拒まれててさー。誰があんたらを看るなんて言った?とか正直心の中では毒づいたよー」
「ほんとさー、何か援助でもしてくれたり?色々メリットあるんならいんだけどねー。
特に何もないから御免だわ…」
「わかるわかる。でも娘さん、お婆ちゃん子だったんでしょ?お世話になってたのに、今大変じゃないの?仕事も調整しないでいるじゃん?大丈夫なの?」
「まーねー。最初は気にしてたんだけどね。それより実際は介護の事のが頭に浮かんじゃってさ。若菜は利口な子だし、時が経てば理解してくれるかな?なんてね」
「今は娘さん平気なの?」
「まー、口には出さないし、いつも通りにしてるよ?仕方ないのよね」
「そうゆーもんよねー。どうすること出来ない現実に抗ってもねー。 娘さんも心を整理する為に口に出さないのかもねー。今の子は賢いわよね」
「ほんと、そうよ」
「そろそろ時間だわ休憩出来たし。会議の準備はじめましょうか」
彼女達はそのまま会議室の方へ行ってしまった。
その姿を見て僕はやっぱり、普通だなと思った。
だって、そりゃそうだ。誰だって自分が1番だ。
嫌な介護しながら、家族の為?に仕事して、家族の為に、お母さん業やるんだ。みんな色々な事を全部は出来ない。そう思えたからだ。
僕と同じだ。
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