第15話

「実はさー。先輩の親が勝手に安楽死制度を利用しようとしてたらしくて、手続きも済ませてたらしいんだよ。先輩めちゃめちゃ落ち込んでてさ。親には迷惑かけたくないから連絡せずに自分で頑張ってたみたいなんだけど、その行動が母親を孤独にさせて制度を利用することになったんじゃないかって」


安楽死制度か。最近じゃ珍しくないけど自分の身近では聞かないな。

「親は利用することを相談したくなかったってこと?」

「それはわからないけど。直接聞いてないからね」

「夫婦2人で決めたなら仕方ないよ」

「いや、先輩の両親は死別で、今回利用するのは母親だよ」

「そうなんだ」

それは子としては悩むとこかもしれないな。

迷惑はかけたくない、それがもし裏目に出たなら悲しいだろう。

だけど、親が本当に孤独だから人生を終わらせることを選んだのかは本人に聞かないとわからない。

母親には母親の考えがあったから、反対されることも想定して自分で決めたかもしれない。

人生を自分の意思で終わらせれる世の中なんだ。

本人の自由じゃないのか。

「俺は、先輩の気持ちもわかるけど、よかったんじゃないか?」

「冷たいなー」

「冷たい?俺が?」

なんだか笑えてしまって。はははと豪快に笑ってしまった。俺がなんで笑っているのか不思議そうに見ながら、「そうだよな」なんて呟いて焼き魚を食べている。

その後は、いつものように仕事の愚痴や色んな話をしながら早めに解散し帰宅した。


部屋に帰ると、いつもより、ひんやりと部屋の空気を感じた。

寝る準備をする中、制度の事が頭から離れない。

俺だって使えるなら使いたい。

俺だって利用したいよ。

こんな普通な自分。

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