第86話
「スーを直々にスカウトされた社長さん……ですよね?」
沙那は、純がモデルをしていると知った直後から、純の仕事について少しだけだが調べていた。
自分の知らない純を、皆が当たり前のように知っているのが寂しくて……という理由だったが。
そして調べているうちに出てきた、三上社長という人物。
顔写真は公開されていなかったが、かなりやり手の敏腕社長として業界から一目置かれていると聞いていた。
「賢そうな顔をしてると思ってたけど、やっぱりそうなのね」
美人というだけで、男を手玉に取っていると誤解され続けてきた三上にとって、沙那の反応は新鮮だった。
大学へ通うようになった純が、今まで見たこともない程楽しそうにしていることに、三上は勿論気付いていた。
こっそり様子を窺っていると、よく純と一緒にいる少女の存在にも気が付いた。
最初は彼女の名前こそ知らなかったものの、純の“沙那を泣かせた”という言葉で、あの少女が例の沙那という子だと知った。
学校からの帰り道を、1人で泣きそうな顔をして歩いていた沙那を見つけるのに、そう苦労はしなかった。
「沙那……なんでそんな怪しいことを言う女にノコノコついて来たんだ……」
相手が三上だから良かったものの、もしそうではなかったらと思うと、純の体は震えた。
「私も、怪しいとは思ったけど……断れなくて」
「……」
三上の放つ威圧感には絶対に逆らえないということをよく知っている純は、黙ってしまった。
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