第83話

確かに、今聞いた話を沙那に説明するとなるとかなり重苦しくはある。



生きるためとは言え、体を売っていたというのが言いにくいのだろうか?



言いたくなければ別に言わなくてもいいことだとは思うが。



それとも、まさか――



「お前が沙那と付き合えないのって、まさかビョーキとか――」



「売りをやめた後で検査を受けたが、全て陰性だった」



……違ったらしい。



今までで一番怖い顔で睨まれた。



「……親戚の女の相手をさせられた時、どうしても上手くいかなくて」



「……」



そりゃあまぁ、そうだろう。



「そういう時は、好きな女のことを想像しながらヤれと言われた」



「……え……」



「……俺はそんな汚れたことに、沙那を利用したんだ」



「……」



言葉が、出ない。



「不特定多数の女に触れてきたこの汚れた手では、沙那に触れられない」



「……」



何と言葉をかければいいのか、分からない。



分からないが……



「……少なくとも、沙那はお前のこと汚いだなんて全く思ってねぇよ」



「それは、沙那が何も知らないからだろう」



「お前の顔見ても、全く何っとも思わなかった沙那が、お前の何に惹かれてると思う?」



祐也の言葉に、



「……」



純はひるんで何も返せない。



「桐生の優しさとか、そういう本質的な部分だろ! 人間性に惚れてるのに、汚れてるとかそんなことを沙那あいつが気にすると思うか?」

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