第81話

時は少し経ち、純が中学2年生の頃。



この時の純の身長は既に170cmを超えており、過酷な境遇により大人びた表情をしていたこともあってか、年齢を19歳だと偽っても誰も疑わなくなっていた。



黙って立っているだけで人目をく容姿は、逆ナンパを狙うには好都合だった。



声をかけられるのを待ち、一夜分の食事とベッドを条件に出すとすんなりと受け入れられる。



日中はしっかりと学校で授業を受け、終わると学校のロッカーに入れておいた私服へと着替えて街に出る。



上手くいかなかったことは一度もなかった。



そんな毎日を過ごしていたある日のことだ――



華やかで下品な欲が渦巻く夜の街に、場違いな程の美女が現れたのは。



いつものように黙って逆ナンパを待っていた純の前に、パンツスーツの美女――三上 叶和子が立ちはだかった。



「あなた、とんでもなく綺麗な顔してるわね」



他の女とは違う、圧倒的な威圧感。



それを肌で感じながらも、純はいつも通りの決まった台詞を、何の感情も込めず、相手の目も見ずに言う。



「俺と寝たいのなら、今夜分の食事と寝床を――」



「あなた、ウチで一発稼ぐ気はない?」



言葉の上から被さるようにそう告げられた純は、



「……は?」



そこで初めて女の顔を、三上の目を見た。



夜の街に負けないくらいの、キラキラと輝く瞳を見て――



この人なら、自分をここから救い出してくれるのではないか。



何故か心からそう思えた。



この三上との出会いが、後に『桐生 純』という超人気男性モデルを誕生させるきっかけとなったのだ。

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