第80話

そこまでを聞いた祐也は、まるで小説かドラマのような話に頭がついていかず、頭痛を覚え始めていた。



「……え? それガチで?」



「嘘だったら俺も嬉しいんだけどな」



答えた純の目は冷えきっており、感情が消え失せている。



信じられないような話だが、昔を思い返せば辻褄つじつまの合う部分が多い気がする。



ずっと謎だった純の家の事情や、突然いなくなった理由。



確かに納得は出来た。



ここで嘘をついたところで、純に得なことは何もない。



「結局、周りの女どもが俺に求めるのは“男”の部分なんだ。生まれてきたこと自体が間違いだった俺には、それくらいしか価値がないらしい」



「……」



そんなことはない、と言いたかった祐也だが、今はまだ純の話を黙って聞くことにした。



「中学に入ると女の要求はどんどんとエスカレートしていってな。家に帰るのが嫌になった俺は……」



純はここで一旦言葉を区切った。



何と言おうか言葉を選んでいるのだろう。



苦々しい表情をしながら、ぽつりと言う。



「中学1年の時から、街で声をかけてきた女の相手をしてやることで、その日の食事と寝床を確保するようになった」



「それって……」



つまりは、売春。



「親戚の女の家にいる時と、結局は同じ生活だった。唯一違う点は、相手の女が毎日違うことくらいか」



「……」



祐也の思考が、再び停止した。



それでも、話すと決めた純は話を続けた。

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