第76話

とにかく沙那に謝れと言う祐也がしつこい。



純が沙那に連絡を取るのを目の前で見届けるまでは帰らない、とまで言い出した。



寝巻きから部屋着に着替えたり、顔を洗ったりするのにわざと時間をかけたりしたのだが、まだ居座っている。



「はーやーくー!」



リビングのソファーに座り、スマホの画面を見つめたまま動かない純を、祐也は急かし続ける。



「……」



「お前がかたくなに沙那との付き合いを拒む理由は何なんだ?」



ここまで焦らされると気になって仕方がない。



「……」



「俺にはともかく、沙那にも言えねぇ事情なのか?」



「……榊よりも、沙那に言う方が気まずいかもしれん」



渋々といった感じで口を開いた純に、



「へ? どういうこと?」



祐也は口をポカンと開けた。



「どこから話せばいいのか……」



天井を見上げ、思案する純に、



「長くなる感じ?」



純の前に仁王立ちをしていた祐也は、純から少し離れた場所にある椅子に座り直した。



「嫌ならやめるが」



「聞きましょう」



姿勢を正して答えた祐也に、純は小さく溜息をついた。



「まず、俺の両親がどこの誰なのかについてから話さないとな……」

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