第74話

「この子たち、感じ悪いわ。もう帰る」



プンプン怒っている三上は、自分の荷物をまとめ、



「そこの女顔のあなた。桐生がちゃんと仕事に来るように説得お願いね!」



祐也に全てを押し付けて本当に帰ってしまった。



「……ああいう気の強い美女ってしびれるよな」



玄関の方向を見つめる祐也に、



「あの人48歳だぞ」



純は再度忠告した。



「第一、お前もう沙那のことはいいのか?」



祐也をじろりと睨みつけながら問いかけると、



「お前の沙那に対する気持ちには勝てないし、お前になら沙那を任せられるって思ったから」



祐也は真っ直ぐに純の目を見て答えた。



「……」



純は思わず祐也から目を逸らした。



以前とは違い、今は純の方が祐也の目を真っ直ぐに見られない。



「なのに、なんでお前が沙那を泣かせてるんだよ」



「……」



「何をしたら、沙那があんな風になるわけ?」



「……」



あんな風と言われても、見ていないので分からないが。



「……なんで、沙那の気持ちを否定した?」



何も言わない純に痺れを切らした祐也が、溜息混じりに質問を変えた。

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