第73話

「なんで入れたんだ、三上さん……」



純が布団の中からふごふごと言った。



「あなたが手に負えないからよ」



当然のように言われ、



「……」



黙り込んだ純の上に、祐也がずっしりと乗っかった。



沙那あいつ、泣き腫らしたブサイクな顔のままで学校来ちまったじゃねぇかよ!」



「!!」



祐也の言葉に、純は布団ごと祐也を跳ね退け、ひっくり返った祐也の胸ぐらを掴んだ。



「沙那のことを悪く言うな!!」



「お前が泣かせたからブサイクになったんだろ!!」



「沙那は断じてブサイクではない!!」



本気で怒っている純に、祐也の方もイラつき始めた。



「家にあんな美人連れ込んでるお前に、沙那のことで怒る資格なんかあるか!」



祐也の言葉に、純の手の力が緩む。



「……この家に女を連れてきたことはないが?」



「はぁ!?」



意味が分からず目を見開く祐也を、



「それは聞き捨てならないわ」



ドンッと押し退けた三上が、純の顔を覗き込んだ。



「ここに居るでしょ、れっきとしたレディが」



右手を胸に当て主張した。



「……48歳の、母親同然の存在は女としてカウントしていない」



ぼそりと答えた純に、



「48歳!?」



突き飛ばされた姿勢のままの祐也は驚いて三上の顔を凝視した。



どう見ても20代半ばにしか見えない。



「早生まれだからまだ47歳よ!」



三上は心外そうに怒鳴った。

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